木村通子のつれづれ

神宮館社長 木村通子が日々感じたことを綴る日記です。雑感の中から、読者の皆さまにとって人生の幸せのヒントとなるようなテーマを取り上げていきたいと考えています。

VOL.106 「三十光年の星たち」

純文学の作家、宮本輝さん。
私が10代のころに名作「錦繍」と出合い、以来
新刊を書店で見つけると必ず、買い求めている愛読者です。
2012年に出た「三十光年の星たち」(新潮社)という小説を読み落としていることに
気づき、先日の三連休に上下巻を読みました。

何をやってもうまく行かず
借金だけが残った30歳の男子主人公が、
高利貸しの70代の老人の運転手をすることになり、
成長していく物語です。

印象に残った素晴らしい箇所をご紹介します。

「現代人には二つのタイプがある。
見えるものしか見ないタイプと、
見えないものを見ようと
努力するタイプだ。きみは後者だ。
現場が発しているかすかな情報から
見えない全体を読み取りなさい」

社会のあり方がまだぼんやりとしていた10代の頃、宮本さんの作品を読んでいた時とは違う、胸に迫るものがありました。
「見えないものを見る力」、自らのテーマです。

「三十光年の星たち」