VOL.291 「コンビニ人間」
「芥川賞の候補作を読んで、こんなに笑ったのは初めてだ」という山田詠美さんの評が目につき、本年度芥川賞受賞作「コンビニ人間」(村田沙耶香・文藝春秋)を手に取りました。
「就職を1度もしたことのない36歳の女性主人公は、18年間コンビニでアルバイトをしています。コンビニで働いている時だけが、唯一自分の存在意義および世界につながっていられることを感じられるという主人公の日常。とても平易な文章で、すぐに物語に入り込むことができました。後半ゆるやかなうねりのできごとの中で、どんどんと心が打ち震え、読んだあとはなんとも言えないカタルシスを感じました。よく「小学4年生が理解できるくらいの簡単な文章で世界を表現しているのが理想的な文学」と言われていますが、この作品はその条件を余すことなく満たした名著だと思います。