「こよみ」を見ると母を思い出す。毎日、忙しく家業と育児に追われ自分のための時間を持つことはほとんどなかった母、趣味を持ち楽しむ姿も、勉強をしなさい、身だしなみを整えなさい、口うるさい記憶もほとんどない。だから私にはあまり関心がないのだろうといつの間にか、私はねだることも、甘えることもしない子になっていた。
そんな母だから本を読んでいる姿などなおさら見たことがない。それがある時、何かの本を熱心に読み始めた事があった。読んでいたのは「こよみ」。そうか、私が結婚するといったから、すぐに買いに行ったのか。本屋になどめったに行かないのに。
良い日は何時か、今年の運勢は?熱心に何度もページをめくる。そんな姿につくづく思い知らされた。誤解していた、私が気づけなかっただけ。こよみに気づかされた母の愛情。いつか私にもあんな日が来るのだろうか。ただ、娘を思いページをめくる。どうぞ幸せでありますように。